撚りかけ車
きょうは、うれしいことに、木原に住むともゑおばあちゃんのおかげで念願がひとつ叶いました。
「撚りかけ車」に正しく糸をセットすることができたんです!
4年前、ここに勤めはじめの頃、この道具は何という名なのか、何をどうするための道具なのか全くわかりませんでした。
織物の関連の本を調べても同じような形態の道具が見当たりませんでした。
でも当館に5点ほど収蔵があるし、豊富地区で古民家を解体する時にも屋根裏に放置してあったりしたので、この地域でよく使われた道具であることはわかりました。
←「養蚕をたくさんして、桑爪をずっとつけてたからこんな指になってるさ」と笑いながら教えてくれた、ともゑさん。
このたび、近隣の方々に尋ねるうちに伝手ができて、実際に使っていたことがあるという、豊富地区木原のともゑおばあちゃんにやっとたどり着くことができたのでした。
しかし、実際に糸をかけてもらうまでには欠損している部品の補修や付属部品や糸などを調達するのにちょっと時間がかかってしまいました。 この撚りかけ車というのは、糸に撚りをかけ、機織りにかける決まった長さの経糸(たていと)を同時に数本作る道具です。 竹管に巻いた糸を錘(つむ)にセットしハンドルを回すと、糸に撚りがかけられ、最上部の大枠に一定の長さで巻き取られるのです。 ←まずは、片側に大小4つ付いている調車にどのように調糸をかけるかを教えてもらいました。 次に、糸車を使って糸を巻いた竹管を錘(つむ)にセットしてから、糸道を通していきます。 その途中では、オモリの代わりとなる「しずわ」とよばれる輪っかのような部品にも通すのですが、当館所蔵の撚りかけ車のしずわは竹製と陶器製の 2種類があります。 資料によって竹管をセットできる錘の数も4~6本と違いがあります。 ともゑさんの話によると、「豊富地区の機織りに関する道具(撚りかけ車、機織り機など様々なもの)は同地区川東(かわひがし)の田中千代吉さんという宮大工が昭和30年代くらいまで製作販売していたと思う」とのことでした。 これは、山梨か地域固有の民具の可能性があります(南アルプス市のふるさと文化伝承館にも1点あるのを観ました)。 当館資料の持つ地域性と資料数の豊富さが民具学に新たな知見を与えてくれる可能性もあります。 糸をセットした状態の撚りかけ車は2階常設展示室機織り機の横にありますよ。今度よ~くご覧になってみてください。 効率よく糸に撚りをかけるために先人の匠が生み出したその仕組みと技、機能美にうならされます。
「撚りかけ車」については調査と研究が必要だと考えています。
撚糸をするための民具として、全国的にはどのようなものがあるのか等、類例を捜すことも重要だと思っています。
まゆこ
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