突き上げ屋根の養蚕家屋
昨年、山梨県甲州市下小田原にある上条集落が文化庁から「重要伝統的建造物群保存地区」と認定されました。
江戸時代中期から昭和にかけて建てられた養蚕を生業の主体とした地域独特の形式をもつ民家や蚕室がまとまって保存されていると評価されたのです。
甲州で多く見られる「突き上げ屋根の家屋」は、明治中頃から大正時代に多く建てられた、養蚕を行うのに適した家屋です。
当館のある中央市豊富地区でも、集落を歩いてみると、この突き上げ屋根の養蚕家屋に出会うことができるんですよ!
←豊富地区大鳥居の突き上げ屋根の養蚕家屋
さあ、ここで、世界遺産に登録された群馬県の養蚕家屋(田島弥平宅・高山社跡)と比べてみましょう。
文久3年(1863)築の田島弥平宅は、蚕室とする2階部分の屋根の棟頂部の端から端までを「ヤグラ」が乗るように突き出させた住宅です。
また、同じく世界遺産に登録された高山社跡蚕室の建物は、2階部分の屋根に3カ所の換気用の「天窓」が突き出ています。(群馬県企画部世界遺産課発行のパンフレット「絹の国ぐんまを知る 世界遺産とぐんま絹遺産周遊ガイド」より)、
いずれも、蚕を育てる屋根裏部屋の日当たりと風通しを良くするためですが、甲州の場合は、作業しやすいように天井の高さをキープするため、かやぶき屋根の中央付近に群馬のようなヤグラや天窓などというレベルではなく、さらに大規模な「突き上げ屋根」と呼ばれるせり出した部分が設けられました。
現在でもわずかですが、豊富地区内では、突き上げ屋根の形とスタイルを変えずに、かやぶきの部分にトタンを張ったり、新しい素材に屋根をふき替えたりして、今も人の住む民家としてその姿を見ることができます。
そして、シルクの里豊富では昭和30年以降に多く建てられた住居と分離した大型蚕室も多くみられます。
さらに、昭和50年代以降に建設された多段循環式壮蚕飼育機を導入した最新養蚕機器配備の蚕室もあるんです!
明治から昭和終わりに至るまでの、養蚕技術の進歩とともに、この地域の特徴であった大量生産体制にそくした養蚕建築の変遷が、現在でも集落内に見ることができるのは、わが「シルクの里豊富」の全国的に見ても稀有な特徴だと思います。
実はね、まゆこは密かに、秋になって涼しくなったら、豊富の集落内の養蚕遺産の調査を兼ねたウォーキングでもしてみたいと目論んでいるのら。
まゆこと一緒にお付き合いくださる方がいらしたら、大歓迎です。 声を掛けてくださいな♪ まゆこ
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