回転蔟の亜流品?
先月、豊富地区内で解体予定の古民家の整理中に見つかったという回転蔟を寄贈していただきました。
しかしちょっと変わっていて、内側の格子部分はボール紙製ですが、外周には紙ではなく薄い木板が貼られており、そのつなぎ目は畳のへりに使われるような厚手の布で繋いであります。
しかも、広げると、長方形ではなく正方形なのです。
ですから、この蔟を吊り下げるための外枠の形状も現在のものとは規格が違うはずです。
昭和4年に販売開始された回転蔟の元祖、斎藤式特許上蔟器とは、明らかに異なるものなのです。
実はこの蔟」を見た瞬間、まゆこには心当たりがありました。
「わぉー、これはもしやあの写真の蔟ではないか?」と・・・。これがその問題の写真です。ほら、よく見ると正方形の蔟が頑丈そうな枠にはまって吊り下げられているでしょ?
当時、甲府市八日町にあった山梨県最大手の蚕具屋、「丸亀商店」のオリジナル商品として発売されたようです。
写真は山梨県内で昭和19年まで発刊されていた養蚕情報誌の広告ページに掲載されていたものです。
この丸亀式自動回転上蔟器なるものは昭和17年2月号~広告が掲載されはじめます。
しかし、これはやはり、斎藤式特許上蔟器の亜流品といいますか、「ズバリニセモノ」なのでしょうね。
実際、この亜流品を使ったことのある人に聞くと、吊り下げるための枠が本物よりかなり重くて、使い勝手が悪かったそうです。
同じ時期に同じ雑誌に掲載の斎藤式特許上蔟器の広告には、『模造品ニご注意』として『近時模造セルモノ単ニ回転蔟ト称シ販売セルモノアリ 是ヲ使用シ迷惑セルモノ多数アリト聞ク 模造品ノ購入ハ数回ノ試験ノ後ニセラレタシ』と載せてあります。
山梨県では昭和8年以降ぐらいから続々とボール紙でできた斎藤式特許上蔟器(回転蔟)の亜流品が発売されたもようです。同じ雑誌の広告掲載ページに注目してみると、その他にも北巨摩郡竜岡村に製作所のあった「横内式自然上蔟器」甲府市飯田にあった「富国上蔟器」などのボール紙製区画蔟の広告が掲載されています。
さらに最近、当館では「丸亀式自動回転上蔟器」と同一規格なのに「新興自動回転上蔟器」と刻印されたものも見つかり、収蔵しました。
戦前の山梨県では、まだ特許制度を楯に厳密に取り締まるようなことはせず、おおらかだったのでしょうか。
いずれにせよ、「回転蔟」という革新的な道具が早い段階から養蚕家垂涎の的の商品だったことが判ります。
なるほど、戦後になり、「斎藤式特許上蔟器」は、農林省による農村復興のための特許公開の要請により他社にも製造を認めたことで、全国に爆発的な普及をしていきます。わが豊富地区にも「渡辺回転蔟製作所」があり大量に生産販売していました。
「回転蔟」ってやっぱりすごいなっ!
まゆこ
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