稲わらの道具
今朝、甲府盆地に初霜がおりました。資料館の水がめにいる金魚ちゃんも水底にじっとして、寒そうです。
さて、おとといから玄関脇ウィンドウディスプレイを模様替えしました。テーマは「冬の農家のワラ仕事」です。
稲わらは、ビニールなどの化学製品が登場する昭和30~40年代までは、日々の暮らしに使われる道具の素材として多く利用されてきました。
稲わらが生活素材として多く使われるようになったのは、7~8世紀頃からといわれています。
それまでは、収穫方法が石包丁などを用いた「穂刈り」だったので、7世紀位から鉄製の鎌での「根刈り」がはじまり、数々の生活必需品に生まれ変わるようになったそうです。
藁の構造は中空のストロー状です。
そのため、空気を多く含み、吸湿性、保湿性、断熱性、クッション性などの特徴を持ちます。
なおかつ、藁選り、藁打ちなどの工程をくわえると柔らかくなり、織ったり曲げたり加工しやすいのに折れにくくなります。
また、束ねて綯うとさらにとても強い素材になります。
その独特の強さ・しなやかさを利用して、私たちはたくさんの道具を生み出してきました。
実用品以外にも、藁は古来から神聖な意味を持ち合わせていて、正月行事や祭りなど神との交流場面によく使われました。
聖と俗の区分をするしめ縄、呪いや身代わりのための藁人形、神社のさまざまな儀式や装飾用具として、厄除けの役割も果たすものも多くあります。
←藁馬(小正月のどんど焼きに連れて行く)
藁は葉にあたる「ハカマ」、幹にあたる「カン」、実の付いていた先端部の「ミゴ」に部位を分けて、利用されます。
「ハカマ」は布団や靴、人形などの詰め物になります。肥料や牛馬のエサにもなります。
「ミゴ」は束ねてほうき(石臼周りの粉集め用、糸取用など)にしますが、わら細工(小正月の藁馬の尻尾やたてがみ部分など)等にも使います。
「カン」は、綯う・編む・織るなどして、大変たくさんの道具の素材に使われます。
←藁という素材ひとつでさまざまなタイプの履物を作っちゃう昔の人はすごいねぇ!
さて、当館常設展示にある稲わらの道具をざっとあげてみましょうか。
藁を加工するための道具として、千歯扱き(藁選り)、打ち台・槌・杵(藁打ち)、俵編み機、ムシロ編み機、縄綯い機。
藁を使った生活用品としては、米俵、建て前用の小俵(中に杉やひのきの葉っぱと「祝」と書いた餅や紅白餅を入れて上から撒いた)、てれん(農作業などで収穫した芋を入れて運んだりする入れ物)、藁沓・草履各種、ムシロ、蓑、藁のお櫃入れ、みご箒、正月のしめ縄、神棚の飾り。
←「莚編み機(むしろあみき)」
養蚕に関わる道具としては、藁製蔟各種(蚕に繭をつくらせる道具)、上蔟網と作り器、藁製の蚕座。
みなさんも来館されたら、藁でできた道具がいかに多いか、展示資料の中から探して実感してみてください.
米作りの副産物である稲わらは、その他、桟俵、干し柿作り用の切り藁、藁縄、藁屋根、物を包む、ブドウなど運搬につかうなど、たくさんの用途がありました。
もみ殻と糠も生活にいろいろと利用しましたから、昔の米作りでは、ほんとうにゴミがひとつも出ないのだなぁと感心させられます。
まゆこ
←石臼の周りの粉をあつめる「みご箒」
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