日本人が愛した計算道具(1)
日本に中国から数学が伝わったのは、飛鳥時代のことです。かけ算九九や計算道具の算木もいっしょに伝わりました。それから今にいたるまで、日本人はいくつもの計算道具を外国から学んでは改良し、愛用してきました。
その間に日本独特の数学である和算も発展させ、生活に必要な初歩の計算から、天体の動きを計算することまでやってのけました。
これから日本人が愛用してきたさまざまな計算道具を時代順に見ていきましょう。
1 算木(さんぎ)
中国数学で用いられた計算道具で、中国では紀元前から使われていました。日本には飛鳥時代に数学とともに伝来します。算木は加減乗除はもちろん、高次方程式をとくこともできます。ところが中国ではそろばんが使われるようになると算木は使われなくなり、使い方もわからなくなってしまいました。日本ではそろばんが普及してもそろばんと併用する形で数学(和算)を発展させました。
赤い算木は正の数を、黒い算木は負の数を表し、算盤という格子を書いた布などの上で計算します。2000年も前に正の数負の数が発見されていたことに驚かされます。
NHKの大河ドラマ「平清盛」や映画「天地明察」で計算道具として何度も登場しましたから、どのように使うか覚えている方もいるかと思います。
今回展示した算木は、中央市の指定文化財で、大鳥居の有泉家に伝わるものです。山梨県全体では確認されている算木は5セットしかありませんが、その貴重なひとつです。5セットの中では最も多く算木の棒が残っているというのも貴重です。有泉家は裕福な農家で、幕末から明治にかけて寺子屋を開き子弟の教育にあたっていたとされ、算木もそこで使われたものと思われます。
黒算木140本と赤算木353本(彩色せず木素地のまま)は、縦20cm横10cm高さ8cmほどの箱に入っています。算木1本の大きさは、長さ3.5cmほどの小さなものです。これなら携帯にも便利でしょう。
私も算木を使って加減乗除の計算をしてみましたが、慣れないのでなかなか正解にたどり着けませんでした。模型の算木を作って体験できるようにしてありますので、ぜひ資料館に来て算木体験をしてみてください。できないことに挑戦するのはいいことですから。
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