芋から蒟蒻を作った
富子だけんど、お田植えん始まっとうとこもあって、忙しくなるねぇ。資料館にもあとちっとで蚕も来るし、世話をしなきゃあならん生きもんが多くなると大変だよ。
まあ、今日は忙しくなる前っちゅうこんで、蒟蒻(こんにゃく)を作ってみとうさ。コンニャクの芋を近所の人にもらったから、うれしいこんじゃんと思って。
見ろしね。でっかいらもの。これで3年だって。コンニャクは中国の暑いとこが原産だから、夏に種芋を植えて、秋にゃあ掘り出しとかんと駄目になっちもうだよね。1年目の芋はひょろっと細くて、紐みたようなもんさ。植えとくとだんだん太ってくるからね。そりょう繰りけえ(かえ)して、3年くれえ立つとでかい芋になるさ。普通は3年か4年以上は置かんけんど、7年目にゃあ花ん咲いて枯れちもうだって。
私ん子どもの頃、おとうちゃんがコンニャクを1本だけ育てていて、コンニャクの花ん咲いたって見してくれたこんがあったけんど。めずらしい花とは思っても、きれえな花じゃあねえね。その後コンニャクは枯れちゃったさ。結局蒟蒻は食わずじまいってわけ。
芋がでかかったからとりあえず半分だけ使って作ってみとうさ。皮をむいて、おろし金ですりおろして、水を入れて混ぜるっちゅうと、最初はピンク色になるさ。蒟蒻を作る時にゃあ、最初から最後までゴム手袋をしていんとえらい目に会うよ。「シュウ酸カルシウム」っちゅう劇物が含まれてるから、うっかり口になんかくっつけたりしたら、やけどをしたようになって、窒息したりするだって。手にくっつくとかゆくてたまらんようになるからね。
火にかけてかきましながら焦がさんように煮るとだんだんねずみ色になってきて蒟蒻っぽくなってくるさ。時間をかけてゆっくりやるさ。
そのあと凝固剤の「水酸化カルシウム」を混ぜて羊羹流しに入れて固まらせるさ。作り方を教えてくれとうおばちゃんはソーダって言ってたけんど、今は薬屋で「水酸化カルシウム」っていえば売ってるからね。昔は灰を水で溶いた汁を使ってただって。推古天皇のときに中国から輸入しとうって言うから、その時は灰を使うしかねえさね。
固まるのを待ってっから包丁で切って、鍋でゆでてあく抜きをするさ。30分ばっかゆでれば出来上がりっちゅうわけ。ゆでる時にはふくらむから、でっかい鍋でねえとだめだよ。
こりょう薄く切ってわさび醤油で食うと、うまくてうまくて、買っとう蒟蒻なんか食えたもんじゃあねえよ。ゴムみとうような蒟蒻じゃあなくて、芋で作ったこん(こと)が口のなかで主張する蒟蒻だよ。
山梨のような山国じゃあ、どこのうちでも畑のはじっこにコンニャクを植えといて、あたりめえのように蒟蒻を自分のうちで作って食ってとうずらね。コンニャク芋を手に入れて植えてみたいもんどう。イタリアじゃあ、「しらたき(糸蒟蒻)」をパスタの代わりに使うっちゅから、日本でも流行るかもしれんね。なんてったてカロリーは低いし、腹の掃除はしてくれるしさ。
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