トイレの神様
富子だけんど、今日は朝っから夕方のようの天気じゃんね。ほんだから公園も土曜日だっちゅうに、人があんましいんようだね。
うちでもやっとこさっとこ、下水道をつなぐことになったさ。下水管をめえに(前に)工事んしてある本管につなぐ工事をして、いよいよ浄化槽をつぶすだんになっとうさね。
浄化槽をつぶすときにゃあ、櫛と鏡と口紅を用意しておくようにって下水道工事の業者さんに言われて、「うわ!トイレの神様へのお供え、今でもやるだねぇ。」と感動したさ。「見てみたいもんだよう。写真も撮りてえよう。」と思っとうさ。
私がちっくいころのこんさ。家の便所(当時はトイレなんちゅう、しゃれたことは言わなかったからね)をつぶすときに、いっさら化粧なんちゅうこんはしたこんがねえお母ちゃんが、コンパクトやら口紅やらをどっからか手に入れてきて、「便所の神様はきれいずきだから、化粧品や鏡をお供えするんだよ」って言うさね。便所をつぶすところは見てなんだから、どういうようにお供えしただかしらんけんど、生まれてはじめてお供えするとこを見られるチャンスっちゅうわけさ。
当日は、まず最初に、浄化槽を清掃業者に頼んできれいにしてもらってさ、固いプラスチックでできた浄化槽の底に、鉄の棒を打ちっつけて穴を開けたさ。これで浄化槽の役目はおしめえさ。そけえ(そこへ)櫛と鏡と口紅を入れて、塩と酒をまいて清めとうさね。本当じゃあ神主さんにでも来てもらってお祓いもしてもらうずらけんど、うちの場合は下水道工事屋さんが代わってやってくれたことだね。
トイレの神様(厠神)っちゅうのは民間信仰のひとつで便所に祀る神様さね。トイレに神様を祀るっちゅうは、日本中でやってるから、植村花菜の「トイレの神様」っちゅう歌もみんなんに受け入れられたっちゅうこんだね。便所神とか、雪隠神とか、手水神とか、呼び方はいろいろだけんど、みんなトイレのことだよね。
わたしちっくいころは、「便所のそうじをはんでしろば(よくすれば)、きれいなぼこ(子)が産まれる」とみんなが言ってたねぇ。厠神はきれい好きだからだね。口紅をお供えするのだから厠神は女の神様かと思ったら、男女神ちゅう説もあるらしいさ。
昔の便所は、今みたように、水洗でピカピカなもんじゃあなかったからね。便器の穴から下をのぞけば、し尿が直接見えるしさ、はねかえっておつりが来るこんもあるからね。足を踏み外して落っこちでもしろば、えらいこんだよ。ほんだから便所は、あの世とこの世の境目っていわれて、神さんを祀る場所になっとうだね。
« H27企画展「山梨の遺跡発掘展2015」 | トップページ | 大鳥居千本桜開花情報4+シカの話 »
「豊富の富子」カテゴリの記事
- 大麦で麦茶を作った(2017.03.28)
- 麦と菜の花の春(2017.03.23)
- 日本で初めての音楽教科書(2017.03.19)
- 和宮下向当分助郷身分証明木札(2017.03.16)
- 本年度の学校見学は終了(2017.03.14)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント