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2015年3月12日 (木)

蚕が温まり、寒さをしのぐ道具

Photoこんにちは、まゆこです。

 平成27127日から開催しておりましたミニ企画展『温まる、しのぐ』は本日312日(木)をもって終了となります。

 このミニ企画展をご覧いただいた方には、日本人が古くから冬は部屋全体を暖める暖房ではなく、厚着と、囲炉裏や炬燵、火鉢などから暖をとることで、冬の寒さをしのいできたという歴史を理解していただけたと思います。

 ところで、今日は『温まる、しのぐ』展の番外編として、人間ではなく、蚕が温まり、寒さをしのぐための道具を紹介したいと思います。

Dsc_1616 これらの道具はすべて「養蚕火鉢」と呼ばれる蚕があたたまるための道具です。 

ここ山梨県中央市では、春蚕の飼育は5月初旬から中旬にかけてはじまりますが、蚕は寒さに弱いため、気温の低い夜は一晩中火鉢の中で炭を燃やして蚕室を暖めました。(蚕の成長には、22℃~28℃が適温です)


 蚕室内を暖房・保温する「温暖飼育」は明治中頃からさかんに行われてきた飼育法です。

Dsc_1132← 胴部に繭の図柄が4つあり、その一つには中に大當(おおあたり)の文字が。

 炭を燃料とする蓋付きの火鉢で、藁灰や籾殻をかけて火力を調整したそうです。

 取っ手もついており持ち運びやすく、蚕室内での配置や数の増減も容易なので温度管理にはとても便利でした。

 

 

Dsc_1608

 

しかし一方で、一酸化炭素中毒になる人も続出して、「地獄温度ともいわれた」と豊富村誌に記されています。

大正時代半ば頃からは、練炭が燃料として多く使われた。Dsc_1610 欧風建築を彷彿させる鋳物製のおしゃれな養蚕火鉢。蓋の取っ手が繭の形になっている。

 次は、「養蚕紙張幕(ようさんしちょうまく)」という名の、蚕が寒さをしのぐ紙製の道具を紹介します。

Dsc_0039
←紙張幕を拡げてみたところ。室内をぐるっと囲い巡らすので、かなりの大きさに。紙を貼り合わせて作られています。

 

 

「紙張幕」とは、蚕室内に蚊帳のように天井から床まで張り巡らせて使う、大きな紙でつくられた幕のことです。

蚕の保温や防寒のために用います。主に掃き立てたばかりの1齢から2齢の蚕(稚蚕)を寒さから守る目的で使用されました。

 山梨県の紙の産地である市川大門町(現市川三郷町)と中富町西島(現身延町)でも生産され、全国各地の養蚕家に販売されていました。

 

Dsc_0013

 

この紙張幕の商標には、養蚕と関係の深い馬の図柄も入っている。

 

 以上、当館2階の養蚕のあゆみと技術革新を展示した資料の中から、今回は蚕が温まり寒さをしのぐ道具をご紹介しました。

人間のためには、部屋全体を暖めるという思想は昭和40年代になるくらいまであまりなかったのに・・・。

 

 これらの道具の存在を目の当たりにすると、大事なお蚕さんのためには、紙張幕で室内をテントのように囲った上に、数個の専用火鉢で室温を高くして、保温するということが明治中期ころから盛んに行われてきたことが分かります。

 

 しかも、蚕専用暖房具といっても、鋳物製のものなどは実用的というよりは、かなりデザイン性にも凝っていてお洒落ですよね♪ 

 

 

 先人たちがどれほどお蚕様たちのために特別に心を尽くしていたか、よくわかります。

 最後に、次回のミニ企画展のテーマは「鏡」で、14日(土)からはじまりますからね!

まゆこ

 

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コメント

埼玉県所沢市に住んでいて市の生涯学習センターふるさと研究グループという所で民具の整理などのボランティア活動をしています。その民具の中に鋳物製の小さな炉のようなものがありますが、何に使われていたのか分かりませんでした。まゆ子さんのブログで「欧風建築を彷彿させる鋳物製のおしゃれな養蚕火鉢」とキャプションのある写真を見つけ、それに良く似ていました。そこでこの養蚕火鉢について何か、たとえば燃料は何を使ったか、いつごろのものか、一般的に広く使われていたものなのか、など解ることがあればお教え願いたいと思っております。よろしくお願いいたします。所沢も養蚕が盛んだった所で、養蚕に使われていたことが解っただけでもまゆ子さんのブログに感謝しています。

保條さま
 こちらでは、欧風建築を思わせる…養蚕火鉢」と申しておりますが、養蚕ストーブといってよいと思います。
 燃料は、練炭であったと思います(サイズ的に)。
 練炭は大正時代半ばころから多く使用されるようになりますので、使用時期は大正時代から昭和時代の間ということが考えられますが、はっきりとはわかりません。
 当館資料は、山梨県立博物館企画展にも貸し出しをいたしましたが、その際のキャプションには、『養蚕ストーブ/昭和時代』としていただきました。また「唐草文様と繭形の装飾が施されている。唐草文様は縁起が良い柄でもあり、繭形と組み合わせることによって、繭の豊作をイメージさせる。」というコメントを山梨県立博物館学芸員よりいただいています。

返信ありがとうございました。養蚕ストーブに炭を使ったか、練炭を使ったかで意見が分かれていましたが、返信のお話しが参考になりました。また、所沢市のものにも唐草模様が付いていて、それに関するお話も参考になりました。県立博物館に貸し出すようなものがこちらにあることにも誇りを感じました。

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