山梨県笛吹市『ミヤカタ』工場内の貴重な機械
先日(平成27年1月18日)、中央線石和温泉駅前で昨年の10月まで操業していた「株式会社ミヤカタ」さんの工場を見せていただく機会をいただきました。
この工場は大正時代に横浜に設立した蚕糸包装材料一式を製造販売する「宮方商店」の自社工場として、昭和に入ってから山梨県東山梨郡石和駅前にて操業を始めたそうです。
そして、平成26年10月まで創業者の親族であった須田夫妻が工場を稼働させていました。
日本に現存している製糸工場主要4社(山形の松岡製糸場・群馬の碓氷製糸場・長野の宮坂製糸場と松澤製糸場)に、つい3カ月ほど前まで、蚕糸包装材料(主に、あみそ糸と括糸)を納めていた工場なのです。
まずは、綛(かせ)状のあみそ糸をボビンに巻き直していた機械をみてください。
「綛繰り機」または、「巻返し機」とよばれる機械だと思われます。
あみそ糸とは、中細の木綿糸のことで、製糸場で綛の形に巻き取られた生糸の最初と最後の糸口がわかるように、さらに、糸同士がもつれないように「ヨコ8の字」にかける糸のことです。
製糸工場で行われるその作業は「あみそがけ」と呼ばれ、この作業に使われる木綿糸は、糸口を示す白色の他に、繊度別(糸の太さ別)に色が決まっており、紫・ピンク・黄色があります。
「紫とピンクの木綿糸であみそがけされている生糸の綛」をまゆこは平成26年11月に宮坂製糸場と松澤製糸場で見学していましたが、それらのあみそ糸も実は山梨の「ミヤカタ」で作られたものだったようです!
「ミヤカタ」に残されている「結束糸(括糸)・あみそ糸の見本」
次に、括糸(かついと)を作る機械をご覧ください。
括糸とは、生糸を出荷する際に糸の損傷を防ぎ、荷造りや運搬をしやすいように、生糸の綛を結束するためのひものことです。綛が何束か結束されたもののことを「括」とよびます。この「括(かつ)」を3か所で結束しているのが括糸です。
その他、
・木綿糸を合糸して作った括糸を糸玉にまとめる機械
・小型ボビン用の巻返し機
・繭袋(油単)を縫う工業用ミシン
・巻管
・製糸会社から受注した印刷済みチョップ
の数々などがありました。
工場内の機械は、スイッチひとつを押せば、まだすぐに動かせる状態です。
たった3ヶ月ほど前まで、ここは須田さんというご夫妻が「あみそ糸」と「括糸」を生産し、現存する数少ない日本の絹産業を根っこで支えていた現場の一つだったのです。
工場内をご案内してくださった、いまは亡きご夫妻の娘さん達は「両親が亡くなってから、それまで取引のあった日本中にある何軒もの製糸や織物業者から問い合わせがあり、『この「ミヤカタ」でやってくれていた仕事をしてくれる同業者を紹介してください』といわれ、調べましたが見つけられませんでした。その時初めて、この工場で両親がやってきた仕事がどれほど重要で貴重なものだったかを知りました」とおっしゃっていました。
そして、「ほかに同業者がみつからないということは、この工場内にある機械が希少なものであるということなので、操業時そのままでストップしている状態をなるべくたくさんの専門家の皆さんに見ていただき、この工場内の機械を活用する道筋をつけたい」とのお話をしてくださいました。
まゆこにとって「灯台下暗し」とはまさにこのことで、山梨県内につい最近までこのような絹産業を担う工場が操業していたことを知らなかった自分が悔やまれてなりませんが、ご遺族の意向と同じく、まゆこも、日本の絹産業をつい最近まで支えていたこの工場内の機械や技術を今後活用できたらと強く願っています。
また、その方策を考えていただける人や機関を探すお手伝いを出来る限りしたいと思いました。
この「株式会社ミヤカタ」工場内にある機械についてのお問合せやご相談、アイデア等がありましたら、当館にご連絡ください。
お願いいたします。
(あみそ糸や括糸を実際に製糸工場で扱う様子は当ブログの『まゆこのつぶやき』カテゴリーの過去記事をご覧になってみてくさださい)
まゆこ
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