風呂の話(6)
富子だけんど、あとちっとでお盆じゃんね。お墓の草取りはへえしたけ?草取りでも掃除でもこみんじりとやらっかと思うと、汗びっしょになっちもうじゃんね。
山梨じゃあ、あらかたが百姓だから、「もらい風呂」ばっかだったと思うけんど、甲府とかその周りの町場じゃあ銭湯もあったさね。知り合いに話を聞いた中じゃあ、市川にゃあもらい風呂はなかっとうさ。ちっくいころ市川代官所跡地の近くにあっとう親戚のええ(家)に行ったとき初めて銭湯っちゅうもんにへえっとう(入った)さ。何ちゅう銭湯か名前は覚えちゃあいんけんど、市川にゃあ銭湯はいっぺえあったから、そのうちの一つずらね。代官所跡地にゃあ昼間は紙芝居屋さんが来てえて、子どもんとうが集まってたさ。紙芝居を見るのも初めてだったかもしれんね。お父ちゃんについて浅草っちゅうとけえ(浅草というところへ)行っとう時にも銭湯にへえったさ。お父ちゃんと一緒だったから男湯にへえっとうけんど、入れ墨をしている人が何人もへえってて、背中に絵が描いてあっておもしれえもんだなあと思ったね。
薪で風呂を沸かすと煙や煤が出るじゃんね。屋根の上につん出てる煙突にゃあ、とんがり帽子のようの屋根がついてて、その下にゃあ太い針金を巻いとうようの形の掃除用具がぶら下がってたさ。ほれにゃあ長い鎖がついてて、煤が煙突にたまって燃え具合が悪くなるっちゅうと、その鎖を引っ張って掃除道具を上下させるさ。ほうすると煙突の中についてとう煤が、かじられて下に落っこちて、きれいになるっちゅうわけさ。掃除をするとたいへんの真っ黒い煤が落っこちてくるから、煙突の一番下にゃあ煤のかき出し口があって、その蓋を開けて、バケツなんかへとるっちゅうわけ。掃除は、はしご(梯子)なんかにのぼらんでもできるように鎖は長くて、普段はしばりっつけられてて、使うときにゃあ、外して動かすこんができるようになってとうさ。煙突掃除は子どもの仕事だったね。
屋根からつん出してるもんはもう一つあるさ。便所の臭気抜きだけんど、しってるけ?今じゃあ、トイレは臭いもしなんできれいだけんど、昔は汲み取り式だったから、もろに臭うわけさね。ほれで風の力を使って、くるくる回しながら換気するっちゅうこんずらね。話はどんどん飛ぶけんど、便所から出てきて手を洗うときゃあ(時は)吊り手水(つりちょうず)っちゅうのを使っとうさ。下の方につん出てる金具を押し上げろば、水が出てくるっちゅう仕組みで、水道なんかねえ時代にゃあ便利もんだったさ。
長々しゃべってきとう風呂の話はこれでおしめえにするけんど、次はなにょうしゃべらっかね。
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