風呂の話(4)
富子だけんど、あんべえ(塩梅)はどうでえ。今は晴れてるけんど、えらいもんが日本に来てえて困るじゃんね。特別警報なんちゅうもんが出ちまって。みんなして気をつけんとね。
台風ん来てるに風呂の話でもねえけんどさ。風呂は水汲みも大変だったけんど、へえった後の水の処理も大変だっとうさ。今みたように底に栓があって、抜けば下水へ水ん流れちゃってそれでおしまいっちゅうわけじゃあねえからね。風呂桶の下の方に孔をあけてあって、ほこに木で作っとう栓があったから、水は抜くこんはできたとは思うけんどね。栓にはたいがいぼろ布なんかが巻きっつけてあって、水ん漏らんようになってとうさ。韮崎のおばやんの話じゃあ風呂の水は汲んで「肥場(こえば)」っちゅう枯葉だのわら細工ですぐったわらだのを入れておく所に捨てたっちゅうよ。米のとぎ汁も肥場に入れたりして、たい肥にしとうもんどうって話してくれとう。絶対になにひとつ無駄にゃあしんちゅう精神だね。餅つきょうをした時は餅米のとぎ汁の風呂に入ることもあっっとうだって。肌がつるつるになっつらね。
話を聞いた人がみんなしゃべってくれたのが、お茶をよばれたり、まんじゅうをよばれたりっちゅう「おもてなし」のこんだったね。風呂を沸かしてくれたええ(家)で用意するばっかじゃあなくて、風呂に入れてもらうほうのええ(家)でも小麦まんじゅうを作って持ってきてくれて、みんなんにふるまったりしてさ。風呂は隣り近所の社交の場っちゅうこんだよね。子どもは子どもんとうばっかで、まだ明るいうちに風呂に入らされたっちゅう話もたくさんあったさ。まあ、子どもしゅうも裸の付き合いをしたっちゅうわけだね。
ほれから、水汲みのこんでもいろいろ話が聞けとうさ。井戸から汲んでくるっちゅうのが多いけんど、川からっちゅうのも結構あったね。わき水を樋で引いてきて水槽に貯めといて生活用水にしてたけんど、それだけじゃあ足らんから、川の水を使ったっちゅう人もいたさ。洗濯は川でするのがあたりめえで、米を研ぐのも川の水だったっちゅうよ。ほのくれえ水を手に入れるっちゅうこんは大変なこんだったし、何人もで風呂にへえるから、風呂の水はあっという間に汚くなっとうさね。ほんだから風呂にへえるときゃあ、浮いている垢(あか)をすくって捨ててへえらにゃあならなかっとう。ほんだけんど、風呂場にゃあそんねん明るい電気がついているわけじゃあねえから、汚くてもわからなかったかもしれんね。
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