風呂の話(1)
富子だけんど、草ばっかでかくなって弱ったもんじゃんね。
これっからちっと、風呂の話をしっかと思ってるどうけんどさ。子どもの頃、家の風呂はお勝手の土間の隅にあっとうさね。風呂桶のまわりは壁で仕切られてたけんど、洗い場はお勝手から丸見えだったさ。洗い場っちゅったって、たらいの上に板がのっけてあるだけで、たいへんの水を流すこんはできなかったような気がするよう。家だけじゃあなくて、結構そういう家は多かったね。
だから風呂場は外に作る家が多かっとだよ。うちのお母ちゃんの家でも外にあったし、おだんなの家でも外にあった。友達の家でもそうだったねぇ。外だったら、なんぼでも水をこぼすこんができるじゃんね。ほれに、井戸も外にあるから水を汲んでくるのにも都合がよかったさね。
風呂にへえらん日にゃあ、湯を洗面器だのバケツだのに汲んで顔や足を洗っとうさ。おもしれえこんに、朝は顔を洗わなかっとうだよね。お母ちゃんは、朝洗うと顔にひびっきれができるから洗わんでいいっちゅってたからね。ほんだから学校へ行くっちゅうと、友達が顔を洗ってくるのが不思議だっとうさ。そん時が人生初めてのカルチャーショックだっっとうさね。夏にはたらいを持ち出して行水をしとうもんどう。お勝手の前の小さい庭で水をあびたさね。子どもはそれでもいいけんど、親はどうしてとうずらか。
家の五右衛門風呂はあんまりいいのじゃなくてね。土間より低いところに火を燃すところがあったから、空気の通りが悪くて、いっさら火が燃えんだよ。お勝手は煙だらけどう。煮炊きも竈の火でするから、そっちからも煙が出るっちゅうわけ。煙は上の方にたまるから、子どもんとうは背を低くして、煙の薄い下の方で煙が静まるまでがまんするさ。風呂桶からはちっとっつ水ん漏れてたから、せっかく燃えついた火に水がかかって、もっと煙が出ちまっとうさ。困りもんの風呂だっとう。
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