糸車が四拍子で歌うとき。
こんにちは、まゆこです。
糸車は綿を紡いで糸にする時に使う道具です。大きな竹製の車に調べ糸を取り付け、70㎝ほど離れたところにある紡錘(つむ)に八の字にかけて回します。
糸車を巧く操って上手に糸が引けていると、「ビーン、ビーン、ビーン、ヤ」と四拍子のメロディが聞こえるそうなのですが・・・。
戦前の日本の物理学者、寺田寅彦の随筆に「糸車」という作品があります。昭和10年に書かれたものです。この随筆は、かつて彼の祖母が操っていた糸車の追憶からはじまり、綿から布地になるまでの工程とその道具を、詩的に描写したものです。しかし、決して抒情的になり過ぎずに、科学者らしい目線で正確、詳細に記述しているところが素晴らしく、まゆこは読み返す度にいつも感服させられます。
さて、その中の糸車の記述ですが、
「右手で車の取っ手を適当な速度で回すと、つむの針が急速度で回転して綿の繊維の束に撚りをかける。 撚りをかけながら左の手を引き退けて行くと、見る見る指頭につまんだ綿の棒の先から細い糸が発生し延びて行く、左の手を伸ばされるだけ伸ばしたところでその手をあげて、今できあがっただけの糸を紡錘に通した竹管に巻き取る・・・」
そして、同じことを繰り返す操作のために「糸車の音に特有なリズムが生ずる。それを昔の人は「ビーン、ビーン、ビーン、ヤ」という言葉で形容した。取っ手の一回転「ビーン」で、それが三回繰り返された後に「ヤ」のところで糸が巻き取られるのである」とあります。
まゆこは、糸車を上手に操ることができれば、この「ビーン、ビーン、ビーン、ヤ」を体感できるのだと思っていましたが、どうもまだ全然聞こえてきません。規則的なリズムを刻むことができるようになるには、まだまだそうとうな精進が必要なようです。
まゆこより格段に上手な館長と冨子さんの様子をみても、まだまだ聞こえません。どうしたことでしょう? いつか、聴いてみたいなぁ♪
ちなみに、寺田によると日本の糸車が奏でるメロディーは4拍子なのだそうですが、西洋のものは六拍子だそうです。シューベルトの歌曲「糸車のグレーチヘン」では伴奏の6連音の波のうねりが糸車の回転をあらわしているのだとか。
さて、開催中のミニ企画展「綿と棉」では3月21日(祝)と23日(日)に当館製作の糸車で実際に綿を紡いで糸にする体験を、エントランスホールにて随時開催いたします。
みなさんの糸車からはどんなメロディーが生まれるのでしょうか? このイベントをとっても楽しみにしているまゆこです♪
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