小麦(4)
大寒だからしょうがねえけんど、なんぼでも寒いじゃんね。インフルエンザとかノロとか変なもんもはやってるし。
小麦もいっさらでかくならんじゃんね。ところでさ、郷土資料館のある豊富とか、その南の方の大塚なんかの畑は、「のっぷい」っていって、きめが細かくてねえ。栄養やら水やらがたいへんへえってるから、長い人参でも大根でもすっとスマートに育つじゃんね。ほんだけんど、うちの畑はものすごい粘土質でね、雨なんか降ったひにゃあ、長靴をはいた足が畑に埋まっちゃって、抜かっかとすると足だけが抜けてくるっちゅうけんまくさ。それほどまでにならんときでも、長靴には何kgも粘土がくっついて、重くて重くて歩きにくいのなんの。今じゃ道はみんな舗装されているけんど、私がちっくいころは土の道だったから、畑どうって道どうって同じこんさ。
ほんだから、大根なんか植えとうっても、まっすぐ育つなんてことはありっこねえさ。採れるのは、途中でいくつもの股に分かれて、ねじくれひねくれた大根ばっか。人参どうって同じさね。うちの畑に植えられた人参が、のっぷいの大塚人参や豊富の長人参を見たら、なんちゅうまっすぐの人参ずらって、びっくらこくらね。
この土は、水や空気が通らんばっかじゃなくて、肥料の効きも悪いし、雨が降れば泥団子で、晴の日が続けば地割れがおきるからね。どうしようもねえ土さ。粘った土が農具にくっつくから、畑を耕すのは容易のこんじゃあねえ。だからお父ちゃんは、畑にたいへんの落ち葉や枝なんかを、入れてたね。落ち葉や枝は、周りをでっかい木に囲まれていたから、なんぼうでもあったもんさ。
資料館のふんずき
畑を「ふんずき」で踏んで、そのくぼみに木の葉やらなんやらを入れたさ。ほうして次の畝の土をかぶせていくちゅうわけ。「ふんずき」っていう道具はこの土にゃあ欠かせんね。何本もあったよ。「ふんずき」っちゅうのは「踏鋤」と書いて、「ふみすき」っていうのが本当だけんど、なまって「ふんずき」って言っとうだね。西洋のシャベルと同じもんだけんど、たてに細長いっちゅうわけ。写真のふんずきは芯が木で、周りに鉄の歯がくっつけてあるけんど、うちのふんずきは鋤の部分は全部鉄でできてたね。
今は、ちっくい耕耘機があるから、それで耕したり、弟なんかおっかないこんじゃん、重機で耕したりするだよね。まあ、どっちにしろ深く耕せるところが、全然ふんずきとは違うね。ふんずきで踏んでも、土はまだ塊のまんまだから、こんだ「三本歯」(三本鍬)っちゅう道具で塊を崩さなけりゃあならんだよ。それもしなんでいいだから、機械の力っちゅうはすごごいもんじゃんね。
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