小麦(2)
雪が降ったじゃんね。びっくりしちゃっとう。こんなに早く雪が降るなんてめったにないこんだよ。
資料館の庭はうんと寒いから、小麦は深植えをしておいとうけんど、ようやっと芽が出てきたさ。木の葉っぱが散っちまって、今は緑があんましないじゃん。ほんだから芽が伸びるっていうのはいいこんだね。
今日は、私がちっくいころのことを話さっかね。うちのお父ちゃんが修行で3か月ばっか家を留守にしとうさね。冬の前にする農作業はたくさんあるけんど、麦まきもしなきゃあならん。うちは山の上だから、田んぼはなくて畑ばっかだっただよね。ほんだから、飯には麦を入れて増やして食ってたさ。まわりのうちもみんなそうだけんどね。飯に入れる麦は大麦っていう麦でね。すいとんやうどん、薄焼きなんかにする小麦も作らなきゃならん。米の飯ばっかじゃなくて、そういうもんを食ってでかくなっとうだよ。
お母ちゃんは一人で家事やら、3人の子供の世話やら、畑仕事やらをしとうだよね。その上にお父ちゃんとの面会にいくときゃあ、何十人分もの煮物を作ったり、洗濯物を持って帰っちゃあ大量の洗濯をしたりで、なんぼう時間があっても足りなかったと思うよ。一番上の私は、まだ幼稚園に行ってる年だし、一番下の弟は1歳にもなっていなかっただから、そりゃあ大変さ。子供に晩飯を食わせてっから、お母ちゃんは畑に行くさ。月が出てれば、畑を耕すくらいのこんは夜でもできるからってね。でっかい笊に小麦の種を入れて、切った畝に蒔いて、ほうして土をかけるだけんど、暗い中での仕事ずら、ちゃんと土がかかったかどうかあやしいもんっだたと思うよ。
よくしたもんで麦はちゃんと芽を出して、12月になってっから10cm位に伸びたら、麦踏みをするだよね。麦踏みはよく手伝っとうさ。お母ちゃんと並んで、麦の上に乗って、ちっとっつ動いて。たぶんお母ちゃんは赤ん坊をおぶっていた気がするさ。麦はいじめるとがっしりとして、根っこも増えるだって。昔のお母ちゃんもすごいよね。
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